「自宅に入れたほうが、結局は安いんですよね?」——見積りの前によく聞かれます。答えを先に言うと、金額だけで決めるなら、通ったほうが安く済む人のほうが多いです。ただしそれは「いくらの施設に、週に何回通うか」で大きく動きます。ここでは施設側の10年を自分の数字で出す方法と、自宅側の10年に何が乗るのかを並べます。金額に出てこないものも、最後に正直に書きます。
売る側がこう書くのは変に見えるかもしれませんが、先に言っておきます。10年ぶんの金額だけで決めるなら、自宅サウナが得になるとは限りません。自宅サウナには初期費用があり、それを電気代の差だけで回収しようとすると、通う回数が少ない方ほど長い年数がかかります。
なぜ10年で数えるのか。本体の耐用の目安が10年だからです。これは「10年で寿命が尽きる」という意味ではありません。見方を変えて点検する区切り、という意味です(お手入れと寿命)。ひとまず10年という同じ長さで、通う側と置く側を並べてみよう、という話です。
ただ、「通ったほうが安い」で終わる話でもありません。その差額は、通う先の単価と回数でまるで変わります。1回1,000円の施設に週1回の人と、1回2,000円の施設に週3回の人とでは、10年の総額が6倍違う。まずそこを自分の数字で出すところから始めます。
式はこれだけです。1回の利用料 × 年間の回数 × 10年。年間の回数は、週1回なら48回、週2回なら96回、週3回なら144回として計算します(週1回を月4回、週2回を月8回、週3回を月12回として12か月ぶん。電気代の記事と同じ数え方に揃えています)。
下の表は、利用料を1,000円・1,500円・2,000円の3通りで置いたものです。この3つの金額は計算の前提として置いただけで、相場を示したものではありません。施設の料金は地域と業態でまるで違います。ご自身がいつも行く施設の金額に置き換えて読んでください。
| 1回の利用料 | 週1回(年48回) | 週2回(年96回) | 週3回(年144回) |
|---|---|---|---|
| 1,000円 | 約48万円 | 約96万円 | 約144万円 |
| 1,500円 | 約72万円 | 約144万円 | 約216万円 |
| 2,000円 | 約96万円 | 約192万円 | 約288万円 |
左上と右下で6倍。「施設に通う10年」は、ひとつの金額ではありません。48万円で済む人もいれば、288万円かかる人もいる。自宅サウナを検討するかどうかは、まずこの自分の数字を知ってからの話だと思っています。
この表には交通費が入っていません。車ならガソリンと駐車場、電車なら運賃です。1回あたり数百円でも、年144回なら数万円の単位になります。実際に比べるときは足してください。
職人からひとこと
この表を出すと、たいていのお客様が「思ったより通っていた」と言います。1回1,000円は安く感じますが、習慣になった回数を10年ぶん掛けると桁が変わる。逆に、月に数回しか行っていない方は、ここで自宅サウナを見送る判断になります。どちらに転んでも、数字を見てから決めたほうがいいと思っています。
自宅サウナの10年は、はっきり分けると初期費用と使い続けるお金の2つです。
初期費用は、本体と工事です。ここは現地調査をしないと出せません。分電盤からの距離、搬入経路、防水のやり直しが要るかどうかで大きく動くためです。何が乗るのかは別の記事にまとめました(サウナ設置の総額)。全機種の定価は価格表に公開しています。
使い続けるお金のほうは計算できます。中心は電気代で、1時間あたり約120円が目安です(1kWhあたり30円で試算。定格8kWをそのまま掛けないのは、温度が乗るとヒーターが入切を繰り返し、ならすと実質4kW前後しか使わないためです)。予熱と入浴で1回およそ1.5時間として、1回あたりおよそ180円。内訳は家庭用サウナの電気代に書きました。10年ぶんにすると、こうなります。
| 使う頻度 | 1か月 | 1年 | 10年 |
|---|---|---|---|
| 週1回(年48回) | 約720円 | 約8,600円 | 約8万6千円 |
| 週2回(年96回) | 約1,440円 | 約17,000円 | 約17万円 |
| 週3回(年144回) | 約2,200円 | 約26,000円 | 約26万円 |
電気代のほかに乗るものも、隠さず並べます。
逆に、通う側にしかかからないものもあります。交通費、タオルやレンタル代、そして施設が値上げしたときの影響です。10年という長さで見るなら、通う側の単価が今のまま続く前提のほうが、むしろ楽観的かもしれません。
ここまでの数字がそろえば、追いつく年数は割り算で出ます。
追いつく年数 = 初期費用 ÷(施設の年額 − 自宅の年額)
分母は「通わなくなったことで浮く金額」です。たとえば1回1,000円の施設に週3回通っていた方なら、施設の年額が約14万4千円、自宅の電気代が約2万6千円ですから、差は年およそ11万8千円。ここに初期費用を当てます。
初期費用は現場によるので、ここでは仮に100万円と置いて並べます。実際の金額ではなく、式の使い方を見せるための数字です。
| いま通っている先 | 浮く金額(年) | 100万円なら |
|---|---|---|
| 1,000円・週1回 | 約3万9千円 | 約25年 |
| 1,000円・週3回 | 約11万8千円 | 約8〜9年 |
| 2,000円・週3回 | 約26万円 | 約4年 |
同じ初期費用でも、25年と4年です。「自宅サウナは元が取れるか」という問いに、ひとつの答えは無いということが、この表で分かってもらえると思います。答えは通っている先の単価と回数の中にあります。
そのうえで、弊社は「元を取れますよ」という売り方をしません。上の年数はどれも初期費用を100万円と置いたときの目安で、実際の初期費用が倍になれば年数も倍になります。通う回数が少ない方ほど、金勘定だけなら通い続けたほうが安く収まります。それでも自宅に入れる理由は、次の章にあります。
金額の表には出てこないものを、ひとつだけ数字にしてみます。移動時間です。
片道20分、往復40分の施設に週3回(年144回)通うとします。年に96時間。10年で960時間です。丸1日を24時間として数えると、40日ぶんになります。受付と着替えの待ち、混雑時のサウナ室待ち、ドライヤーの順番待ちは、ここに入っていません。
自宅サウナでこれがゼロになる、と言うつもりはありません。予熱の時間は要りますし、掃除もこちらの仕事になります。それでも、「行く」という判断そのものが要らなくなるのは大きいと思っています。疲れている日ほど、出かける判断ができずに行かなくなる。行かなければ、そのぶんの利用料は浮きますが、入りたかった日に入れていません。
逆に、施設にしかないものも正直に書きます。大きな水風呂、外気浴の風、広いサウナ室、そして人の気配です。自宅の浴室サイズでは、あの開放感は再現できません。そこが目的で通っている方は、自宅に入れても通うのをやめないはずです。その場合、費用は足し算になります。
売らない理由を先に挙げておきます。次に当てはまる方には、正直おすすめしません。
逆に、自宅に入れて良かったと言われるのは、回数が多い方と時間が不規則な方です。夜遅くにしか時間が取れない、朝に入りたい、家族で時間がずれる——このあたりは施設の営業時間とかみ合いません。あとは、人目を気にせず入りたいという声も多いです(女性とサウナ)。
金額の話がまとまっても、そこで終わりではありません。総額の見込み違い、ブレーカー、搬入、断熱——実際に後悔につながった7つは別記事にまとめました(家庭用サウナで後悔する7つの理由)。先に読んでおくほうの記事です。
ここまでの話で、片側は今日すぐ出せます。いつも行く施設の利用料と、行った回数。それを10年ぶんに掛けるだけです。まずそれを出してみてください。思っていた金額と違えば、その時点で判断が変わることもあります。
もう片側——自宅に入れた場合の初期費用は、現場を見ないと出せません。分電盤の空き、搬入経路、防水の状態で動くためです。総額は現地調査のうえ最初に提示し、後から追加請求はしません。「本体はこれ、工事は追って」という出し方はしません。
最初の一歩は、浴室や置きたい場所の写真1枚で構いません。それだけで、こちらから聞くべきことが絞れます。「置けるかどうかだけ知りたい」「概算だけ聞きたい」も歓迎です。
数字を並べても決めきれないときは、一度入ってみるのが早いです。新横浜のショールームで実機を体験できます(体験する・予約制)。熱さの感じ方そのものは人それぞれなので、そこは数字にできません。
※本記事は一般的な考え方をまとめたものです。本文の1回1,000円・1,500円・2,000円という利用料、初期費用100万円、片道20分という移動時間は、いずれも計算の前提として置いた数字であり、相場や弊社の価格を示すものではありません。電気代は1kWhあたり30円・1回およそ1.5時間で試算した目安で、契約プラン・地域・季節・機種・断熱・使い方によって変わります。初期費用は現場の条件によって変わります。各機種の定価は価格表・機種ページをご確認ください。具体的なご相談はこちらから。